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幸せな朝 3

一人暮らしにしては大きすぎる冷蔵庫の前に立つ小次郎は、パンツ一丁という格好だ。 もしこれが腹の出た中年のおっさんだったなら、目を逸らしたいところだろう。 けれど、適度に筋肉がつき、長身ですらりとしたバランスのよい体躯は、高級な下着モデルかなんかを連想させる。 ちなみに下着はローライズのボクサーパンツ。 初対面のイメージなら、白いブリーフかぶかぶかのトランクスって感じだったのに。 ――綺麗な背中……やっぱ、カッコいいなあ……。 那津が後ろ姿に見惚れていると、小次郎はトレイにペットボトル、コップ二つ、可愛らしいラッピングの袋を乗せて戻ってくる。 全開の笑顔を維持したままで。 「……お前、何でそんなに笑顔なんだよ」 小次郎はサイドテーブルにトレイを乗せると、全開笑顔を維持したまま、ベッドに腰を下ろした。 そして、まだシーツにくるまっている那津をじっと見つめる。 グラスに水を注ぎながら、噛みしめるように呟いた。 「那津さんがこうして僕のベッドにいるなんて、信じられないくらい嬉しくて……」 ――それは、俺も同じ気持ちだけど。 小次郎のように素直に、想いを言葉にする才能が、那津にはない。 だからこそ、彼の真っ直ぐな気持ちを受け止めたい。 凄く、恥ずかしいけれど……。 水を飲むために起き上がるが、自分が何も身に着けていないことに気付き、シーツを身体に巻き付けた。 「どうぞ」 「さんきゅ」 冷えた水を口に含んだ途端、のどの渇きが強くなり、三回おかわりした。 相当カラカラになっていたということか。 「那津さんどうかしましたか、キョロキョロして」 「なあ、俺のパンツ、どこ?」

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