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幸せな朝 5

熱っぽい声で名前を呼ばれ、あ、ヤバいと直感した。 なんだかよくわかんないけど、身の危険を感じた。 「那津さんのせいですよ。那津さんの……そんな格好見せられたら……僕、僕は……」 「ええっ? 俺? 俺のせい? 俺が悪いの? お前がこれ着ろって言ったんじゃん!」 怖くて思わずぴょんとベッドに乗り上げた那津は、それが逆効果だとすぐに知ることになる。 同じく乗り上げてきた小次郎に、じりじりと壁際まで追い詰められたからだ。 「どうして逃げるんですか……」 「だって! だって、お前の目が怖いんだもん!」 「あ…………ご、ごめんなさい……」 そうやって、シュンとして見せるのは、ズルい。 那津を怖がらせていると知ってか、小次郎は迫る勢いを緩めた。 必死に己の欲を抑え込もうとしているらしく、不自然に那津から目を逸らし、ゆっくり深呼吸している。 下着一枚の姿なのだ。 戻るには厳しい状態だというのは、一目瞭然だった。 それに、 怖いけど、こいつが俺を見てないのは、――もっと嫌だ。 「――もう、しょうがねえなあ……」 「那津さん……」 こういうの、惚れた弱みって言うんだろうな。 那津は降参して、自分から腕を伸ばし、小次郎の首に巻き付けた。 その身体は触れた途端、ビクッと固くなる。 色白の肌は熱く蒸気して、みるみる朱に染まっていく。 想定外の、第二ラウンド突入。

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