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ハナとイチカ 1
「あらやだちょっと、何これ、美味しいわ……」
「ほんとだね。すごーく美味しいよ、なっちん、まるでお店で売ってるクッキーみたい」
イチカとハナに嬉しい感想をもらい、那津は満足気に腕を組んだ。
「だろー? スイーツグルメなお前らに褒めてもらえたって知ったら、あいつマジ喜ぶよ」
本当は、二人の感想を聞くまでドキドキしていたのだけど。
那津は、ホッとして胸を撫でおろした。
二人に渡したのは、小次郎の手作りクッキーだった。
スイーツ好きの那津のために、初めて挑戦したらしい。
試作品のつもりが、思いのほか上手くできたため、那津に渡すつもりで可愛くラッピングまでしていたのだ。
小次郎の部屋に泊まった翌朝に、すぐ那津に渡すつもりでいたのに、想定外の第二ラウンドのせいで、那津が受け取ったのはすっかり陽の落ちた時間帯だった。
「コジローったら、超絶イケメンで、背が高くて、高学歴でお坊ちゃまで、その上スイーツまで作っちゃうなんて、リアルハイスペック彼氏じゃないの! にくいわね~」
「かっ……か、彼氏……?」
実際、晴れて両想いになって、一応恋人になったわけだけど。
イチカに言われたことで妙に生々しく感じて、うろたえてしまう。
「そうだよ、コジローはなっちんの親友から彼氏に……あ、コジローは弟子って言ってたから、弟子から彼氏に昇格したってことだね」
「なにそれ、コジローって弟子だったの? じゃあ、なっちんは元師匠? なんか、昔の芸人でそんなカップルがいたような気がするわね」
「いや……弟子とか師匠とかは、あいつが勝手に言ってたことだから、スルーして」
「なっちんに彼氏かあ……」
ハナに感慨深げに呟かれて、嬉しいけどそれ以上に照れくさくて動揺してしまう。
「……まあ、そんな感じだけど、俺ら男同士だし、か、彼氏って……」
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