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第2話
眞仁side
「ただいま…。」
まぁ流石に起きてはいないだろう、電気消えてるし。たまには「おかえりなさい」って言ってもらいたいとか思ったりするけど、言ってもらえない理由は俺にある。というか、言わせないの方が正しいか。
俺と番である陽茜(あきね)は俺の5つ下、去年高校を卒業したばかりだ。最初が最初だったからか俺はこの若い妻に戸惑いを覚えていた。愛してるには愛してるのだが。
今まで家族というものに馴染みがなかった俺は家で誰かが自分の帰りを待っているという状況を知らない。よって早く帰ってやろうとも思わない。俺が帰るのは同僚や幼馴染みと居酒屋を3件くらい梯子したあと。今日みたいに日をまたぐこともザラだ。
ガチャ
静まり返った我が家。ダイニングの電気をつけて驚いた。テーブルの上には手作りの夕飯、そしてその向かいの席に突っ伏した陽茜。規則正しい息遣いから寝ていることはわかった。
「夕飯…俺の分だよな?…。」
今日だけ作ったってことは無いだろうからいつも作ってくれていたはずだ。帰ってこない俺のために夕飯を作ってどうしていたのだろう。
「朝残りを食べてる素振りはなかった…俺と同じものを食べてたな。冷蔵庫に残り物が入っていたことも無い。」
残る可能性は、
「毎日作って、帰ってこない俺を待って、捨てていたのか…。」
胸がツキっと痛んだ。陽茜いつもどんな気持ちで作った夕飯を捨てていたんだろうか。どんな気持ちで俺に夕飯を作ってくれていたんだろうか。
「ごめん、ごめんな陽茜。」
言葉は自然と零れた。俺が逃げていたから陽茜を苦しめた。
「明日からはちゃんと帰ってくるから…。」
出会った頃と変わらない華奢な身体を横抱きに抱き上げる。寝室に運びながら、頭では明日はなるべく早く仕事を終わらせようと考える。
「ほんとにごめん…愛してる。」
そう呟いてそっと額に口づけを落とした。
眞仁side 終
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