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第3話

「今日もどうせ帰ってこないんだろうな…。」 今日のメニューはチーズのせ煮込みハンバーグ、コツはあえて玉ねぎを炒めないこと。そうすると玉ねぎのシャキシャキした食感がのこって美味しくなる。 「あとは付け合せの野菜のソテーを作って…。」 ガチャ 「え…?」 「ただいま。」 ウソ…眞仁が、帰ってきた。 「お、かえりなさい…。」 何月ぶりだろうか、前回の発情期時以来だから大体3ヶ月ぶり。「おかえりなさい」なんて言ったのは同棲初日ぶり、つまり2年ぶりくらいだ。 「夕飯は?」 「えっあ、あと付け合せのソテーを作って終わりです。」 「そうか、先にシャワーを浴びてくる。」 「…いってらっしゃい…。」 自室の方に消えっていった眞仁を見送り、独りごちる。 「会社で何かあって早く上がれたのかな?それで誰とも都合が合わなくて仕方なく帰ってきたんだろ。きっと。」 さぁ残りのソテーを作ってしまおう。 「待たせて悪いな。」 「疲れてるんだからゆっくりして来て構いませんよ。」 「そんなことしたら君と一緒に食べれなくなるだろう?」 会社でなんか変なもの食べたのかな?眞仁俺にそんな甘いセリフを言うのは、発情期のセックス中だけだ。 「ゆっくりしてこられても待ってますよ。」 いつも帰ってこない貴方を深夜まで待っているのだからシャワーの間、数十分待つのなんて苦でも、なんでもない。 「それに、せっかく作ってくれた料理を冷ましてしまっては申し訳ないだろう?」 いつも、冷めきった夕飯をゴミ箱に捨てているので何とも思いません。 眞仁が何か言う度に、気持ちがささくれ立って行く。思い出したように、気まぐれに、優しくしないで。せっかく慣れたのに、無感情でいられるようになったのに。 「…お腹が空きました。早く食べましょう。」 ハンバーグは好物のはずだったのに、まるで砂を噛んでるようだった。

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