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第7話

気づくと俺は真っ暗な中に独りでいた。緩いゼリーのような濃厚な黒。飲み込まれ行くようで少しだけ怖くなる。 でもよく考えたら、これは俺が望んだことだと思いあたる。独りぼっちの寂しさに耐えかねて自ら死を選んだ。だからこれでいいんだ。 Ωだと分かったのは中2の夏。いきなり来た発情期に戸惑い部屋に閉じこもっていたら親にバレた。そしてこともあろうか父親に襲われたのだ。 母親の再婚相手でαだったそいつは、母親が出かけた隙に俺を押し倒し縛り上げて犯そうとした。そいつに跨られた俺とその上でハァハァと息を乱すそいつを帰ってきた母親が見つけた。これで助かる、母さんが助けてくれる。そう思った俺を母親はことごとく裏切った。 抑制剤を打ち落ち着いた俺の元に来た母親は俺を「全てお前が悪いんだ」と詰ったのだ。父親にレイプされかけた実の息子に散々酷い言葉をぶつけた挙句最後には生まれて来なければ良かったのだと吐き捨てた。 味方だと信じていた母親にすら裏切られた俺は着の身着のまま家を飛び出した。抑制剤の切れたまま色香を垂れ流しにして、深夜の繁華街をふらつく。 たくさん声をかけられて、そのうちの1人が眞仁だった。翌朝目が覚めると知らないホテルにいた。ああ俺は抱かれたんだと何の感慨もなく思った。まるで所詮Ωは性欲処理だと言われたような気がして生きることが、全てがどうでも良くなった。 このまま死んでしまおうかと考えていたら、アイツはそれを察したのか俺を再度押し倒しベッドに沈めた。そして、こともあろうか項に噛み付いてきたのだ。 「お前は俺の番になった。俺に黙って消えることは許さない。」 そう言い放ったアイツは俺を引きずるように連れ帰ると軟禁した。高校と買い物は行かせてくれたがそれ以外は外出禁止。どうしても出る時は自分と一緒に。 そんなルールを押し付けたのにしばらくするとアイツは帰ってこなくなった。3ヶ月に1回の発情期の間は一緒にいてくれるがそこに愛だの恋だのは存在しない。 どこかわかっていた結末だけどそれでも最初は悲しかったし辛かった。自分で作った夕飯をゴミ箱に捨てる毎日。次第に自分の中から何か大事な物が抜け落ちて行くのを感じた。けれどそれを止めようとは思わなかった。

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