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第9話

眞仁side 仕事を有給とって2週間休みにすると、俺は陽茜に付きっきりになった。朝夕問わず手を握りしめて懺悔する。戻ってこいと呼びかける。 それが幸をなしたのは4日目のことだった。 いつも通り手を握りしめて言葉をこぼす。いつもなら何の反応もない陽茜から初めて反応が返ってきたのはその時だった。 弱く辛うじてという感じだか、確かに握り返されたのだ。 「!!陽茜?陽茜!」 必死に呼びかけていると、陽茜のまつ毛が震えた。そして陽茜はゆっくりと目を開いたのだ。 まだぼんやりしているのだろう、陽茜の瞳は焦点を結んでいない。俺は感動のあまり言葉を失っていた。 「…ま…ひ…と…?」 「あきね?」 「…ここは?」 「…病院だよ。」 そうと呟いたきり口を閉じた陽茜を見つめる。愛おしくて愛おしくてたまらない俺の番。やっと戻ってきた。 「おれをよんだのはまひと?」 「ああそうだ。何回も呼んだ。」 「さっきのことばはほんとう?」 さっき?あれは陽茜に聞こえていたのか! 「もちろん、本当だ。大切にする、言葉にする。愛してると、大好きだと。」 それを聞いて陽茜は綺麗に微笑んだ。 「そっかぁ…フフ、俺初めて言われた。すごい嬉しい。」 俺は堪らず陽茜の可愛らしい唇に口付けた。 「大好きだ、愛してる、戻ってきてくれてありがとう。」 「俺も眞仁のこと大好きだよ。」 そして俺達はここが病室であることも忘れ何回も何回も、今までの分を埋めるようにキスを繰り返した。 「本当にもう平気なのか?」 「大丈夫だって言ってるでしょ?心配症だなぁ眞仁は。」 有給開け仕事に行くのを渋る俺の前で最愛の奥さんが呆れつつ、それでも綺麗に微笑む。 「お仕事頑張って、眞仁。」 サラリと俺の頬を撫でた左手の薬指に光るお揃いの指輪。その手をとって指を絡めると、キュッと陽茜も返してきた。 「行ってきます。」 そのまま引き寄せて口付けると、小さく笑った陽茜が答える。 「いってらっしゃい。」 1度間違えた俺達は、今度こそ間違えないようにゆっくり進んでゆく。ゆっくりでいい、亀の歩みでも必ず幸せなゴールにたどり着けるから。 さて今日も愛しの奥さんの手作り弁当を持って、手作りの夕飯を楽しみにしながら仕事に精を出そう。俺達の明るい未来のために。 end

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