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第33話
「あら綺麗にしているのね。」
部屋に入ってきた眞仁 の母親は明らかにこちらを見下した口調でそういった。そしてリビングをぐるっと見回すと置いてある陽仁 の玩具に目を留める。
「子供はいないの?私孫を一目見たいのだけれど。」
「すみませんね今さっき寝たところで。また機会があったら可愛がって上げてください。」
こんな良く分からない人たちを陽仁に触れさせるものか。見せたが最後何をされるか分かったものじゃない。
「そちらの椅子に座っていてください。今お茶をお出しします。」
リビングにあるダイニングテーブルを指すと思いのほか大人しくそこについてくれた。今のところ婚約者だと言う方は一言も喋っていなくてどんな人柄か掴めない。まぁでも眞仁が嫌がるくらいだから癖はあるんだろう。
お茶を入れ終わり俺が席につくと待っていたように母親の方が口を開いた。
「あなたと眞仁は入籍されているらしいのだけれどあなたの御両親はどう思っていらっしゃるのかしら?」
流石に俺と両親のイザコザは調べられなかったらしい。
「俺は親と絶縁している身なので何も。俺に夫がいることも子供が出来ていることも知らないかと。」
「そりゃΩ の子供なんてお荷物だもの。」
ここに来てやっと婚約者が口を開いた。と思えばΩに対する嫌悪感顕な言葉。ああ眞仁が嫌うわけだ。眞仁はこういう人の表面だけで人を嫌ったりする人が1番嫌いなのだから。
「眞仁さんのお友達にもΩがいたけれどあのΩも男のくせになよなよしていて気持ち悪かったわ。」
彩人 さんのことだろうか。この人はΩである俺達の方が自分より恵まれた環境にいるのが気に入らないのかもしれない。
彩人さんははっきりいってこの人より美人だし、政宗 さんという番 がいる。いつも会うと幸せそうに緩んだ顔をしている彩人さんは明らかにこの人より幸せな人生だろう。
俺も眞仁っていう優しい番がいて陽仁っていう可愛い子供がいる。眞仁からの話だとこの婚約者はβ で眞仁の子供を身ごもることは困難だ。
生物学上ではβである自分の方が上なはずなのに下のΩである俺達の方が幸せそうに過ごしている。それがこの人は気に入らないんだ。
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