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第34話

「別に長居する気はないから本題に入らせてもらいます。」 こちらの都合など考えもしていないであろう高飛車で高圧的な声音。何故この人から眞仁(まひと)の様な人間が産まれるのか不思議だ。 「端的に申し上げると、眞仁と別れてほしいの。」 予想通りの言葉。そして、俺が何を言われようとこの言葉だけには頷かないと決めていた言葉。 「眞仁はこんな所で止まっている人間ではないのよ、Ω(オメガ)のあなたには分からないでしょうけどあの子はこれから先いくらでも素晴らしい人生が待っている。あなたといることでそれが閉ざされるの、だからあなたと別れてここにいる西園寺(さいおんじ)さんと一緒になる方がいいのよ。」 母親が口を閉じると今度は婚約者が口を開いた。 「私は幼い頃から眞仁さんの事を知っていて、その全てを含めて眞仁さんのことを愛しています。Ωの分際で私から眞仁を寝とっておいてよく平然としていられるわね。あなたと籍を入れていることが眞仁さんの汚点になるの。ねぇさっさと別れてちょうだいよ。あと、Ωになんて育てられたら子供が可愛そうだわ。私が眞仁と一緒に育ててあげる。」 こちらが黙っていれば好き勝手言ってくれる。この人たちは眞仁だけじゃ飽き足らず陽仁(あきと)までもを奪おうと言うのか。もう堪忍袋の緒が切れた。いい子に黙って言うことを聞く子供じゃない、いくらでも反撃してやろう。 「お話大変よくわかりました。ですが、いくつか質問してもよろしいでしょうか?」 「なによ。」 「まずお母様、あなたの息子さんは大変よくできた方です。俺には勿体ないくらい。」 「そうよ、あなたにはふさ…」 「ですから自分の人生において何が幸せかどうかくらい自分で選んで決定することが出来ると思います。まだ未成年の大人の庇護下にいる子供なら1時(いっとき)の雰囲気とノリだけで決めるということがあるかもしれませんが、俺が眞仁と出会った時少なくとも眞仁はもう立派な社会人でしたよ?」 母親は俺の勢いに押されたじたじとしている。 「自分の息子を素晴らしい人間だと言いながらその息子がした選択は間違っているから私が正すというのは矛盾ではありませんか?あなたは自分の息子を信用していないのですか?」 「…。」 返す言葉もないらしく押し黙ってしまった。それを見た俺は攻撃対象を婚約者の方へ変える。 「西園寺さんでしたっけ?幼い頃から眞仁を知っているおっしゃいましたね。それならば眞仁が貴方のような人間を1番嫌うといこともご存知ですよね?眞仁の全てを愛すると言うのなら眞仁が発情期のΩに当てられてレイプしたことも、幼馴染みであるΩの彩人(あやと)さんとも過去に関係を持っていたことも受け入れ許すことが出来るということですよね。」 もちろんきちんと眞仁から聞いた話だ。まだ眞仁達が高校生の頃、番のいない彩人さんが発情期に見舞われた時慰めていたらしい。それを聞いた時は驚いたし正直嫉妬したが過去を攻めてもしょうがない。今の眞仁はよそ見をせず真っ直ぐに俺と陽仁を愛してくれて、毎日夕飯には帰ってくるそして日曜日はきちんと家族サービスをしてくれるできた夫だ。俺は過去ごと眞仁を受け入れて愛しているのだ。

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