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第36話

「眞仁と俺は本当に行き釣りの言葉がぴったりな始まりなんです。発情期だった俺とヒートの近かった眞仁、偶然出会った。」 もしあの時俺が恵まれた家庭にいたら。もし俺があの時あの路地に座り込んでいなかったら。もしあの時…思いつく「もし」という想像はいくらでもある。重なり合った偶然のどれが欠けてもきっと今の俺達はいない。 「上手くいないこともすれ違うこともあった。俺が心配性でネガティブ思考だから勝手に1人勘違いして突っ走って、結局眞仁に迷惑をかける。何回も何回も繰り返してきたんです。」 繰り返してきた分だけお互いを思いやる気持ちは強くなった。俺達の絆は一層深く強固なものになった。そう思えばあの苦しんだ時間も無駄じゃないと思える。 「貴方達から見れば俺はみすぼらしくて分不相応かもしれない。でも、眞仁は俺の事を見て、選んでくれたんです。親にすら愛されなかった俺を愛してくれているんです。」 親の当たり前の愛情を失った時途方に暮れた。あのまま消えてしまおうかと考えた。それを引き止めたのは眞仁だ。眞仁が無理矢理でも俺を繋いだから今俺は生きている。 「先程は失礼なことたくさん言って本当に申し訳ありませんでした。色々気に入らないことも多いと思いますがどうか俺達のことを認めてはくれませんか?」 本当は眞仁の親と揉めたくはなかった。婚約者だという人はもうこれっきりにすることも可能だけど眞仁の親とはそんなことになりたくない。 俺の誠意を行動で見せよう。要するに土下座でもなんでもしようと俺が席をたったその時、思いもしないかった声が待ったをかけた。

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