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第38話
「それで本題なんだが、母さんが俺と西園寺 のとこの第2令嬢を結婚させようとしてくる件なんだ。」
「それはお前が家を出ていくきっかけになった事だろう。今更なんで。」
「確かにあの時も同じことで母さんと揉めたけど、それとは別にまた母さんが百合香 を嗾 けてきてるんだ。」
「またか!?」
俺が大学2年、20歳くらいの時のこと。その時もやはり母親が西園寺家との繋がりを持ちたいがために俺に政略結婚をしろと迫ったことがあった。西園寺百合香のことは幼い頃から知っていて五本指に入るくらい嫌いな人だったから当然俺は突っぱねたが、それが原因で母親と関係が悪くなり俺が家を出るまでに至ったのだ。
今回のことは父と兄の反応から母親の独断だった様で政略結婚も母親の金と地位欲しさにだろう。
「しかし、眞仁。お前には伴侶がいるんだろう?」
「ああ、だから離婚しろと。陽茜 にまで細かい嫌がらせをしているらしい。大方母さんと百合香が一緒になってやっているんだろうがな。」
「そんな勝手な…元々自己中心的な所のある人だけどそこまでとは思わなかった。」
母親の暴挙に父も兄も唖然としている。
「もう俺にはどうしようもないから2人に止めて欲しいんだ。生憎俺の奥さんはそこまで強くない、これ以上続くと負担になりかねないんだ。」
陽茜はネガティブ思考だ。少しのことでも悪い方に悪い方に考える癖はまだ健在で今回の事も下手すると自己犠牲に走って失踪などという最悪な結末になる可能性は決して低くない。
「いくら母さんでも父さんと兄さんが言ったら聞くと思うんだ。力を貸してくれないだろうか。」
「もちろんだ。流石に私もここまでの暴挙は放っておけないよ。」
「我母親ながら驚きました。これでは眞仁と陽茜さんに理不尽過ぎる。是非力になりましょう。」
「ありがとう、とても心強い。そういえば今日母さんは?」
「ああ、なんか百合香さんと出かけていきましたが…まさか!」
「嫌な予感がする…俺は一旦家に戻る。」
「私達も一緒に行こう。解決は早ければ早い方がいいだろう。幸い今日はオペは入っていないし診察も他の人で充分平気だろう。」
「僕も大丈夫です。」
「本当か!凄く助かる。家で母さんと1対1は正直キツいと思っていたんだ。」
そして俺は父と兄を連れて母親がいる(かもしれない)我が家へと向かったのだった。
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