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第43話
もらえた言葉が嬉しくて、少しだけ浮かれてしまう。
「ただ一つ言うならば…。」
お父さんの声に膨らんだ心が音を立ててしぼみ始める。何を言われるんだろう。
「挨拶に来て欲しかったかな。」
「ひぇ?」
全く予想していなかった言葉に変な声がでた。挨拶?
「親としては子供に会えないのは悲しい。例えそれが血の繋がっていない子供だとしてもね。」
子供に会えないのは悲しい。俺のこと?なにそれ、すごい嬉しい。
「だから、こんな形になってしまったのは少し残念だけれども私は君に会えて本当に嬉しいよ。改めて、はじめまして陽茜君。一条眞仁の父、一条優真 だ。よろしく。」
「それでは僕も。はじめまして陽茜さん。眞仁の兄一条優仁 です。」
優真さんと優仁さん。2人が自己紹介してくれたんだから俺もしなくちゃね。
「えっと、はじめまして優真さん優仁さん。一条陽茜、旧姓は有栖川陽茜 です。」
旧姓の方はここ暫く名乗っていないけど、きっと菫さん達が知っているだろうから。
「陽茜さん、挙式はされたんですか?」
優仁さんがそんなことを言った。そう言えば全然考えていなかったな、結婚式。
「してないです。入籍だけにしようって2人で決めて。」
双方の家族にバレることを恐れて、決めた。「結婚式はしない。入籍だけにしよう。」と。だから別に今までしたいと思ったことは無かったけれど。
「それは勿体ない。」
「そうですか?」
「ええ。陽茜さんはこんなにも美しいのですからきっとドレスがにあいますよ?」
俺がドレス着るの?普通に2人でタキシードかと思ってたけど。それにいいのだろうか。さっきから優真さんと優仁さんに抑えられてて発言していないけど菫さんと百合香さんはまだ認めないって顔してる。特に百合香さん。
「母と百合香のことは気にしないでいい。」
そんな俺の思いを感じたのか、優真さんがそういった。
「ふたりの説得は私達に任せてくれて構わない。まぁふたりが反対したところで眞仁の意志が変わらない限り意味は無いけれどね。」
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