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終わらない二人きり。
俺たちは、二人きりだ。
他の人々からは隔絶された別の世界で生きている。もう、あちら側には戻れないだろう。
ちくりと、胸が痛む。
分かっている。何度も言い聞かせた。おそらくもう二度と、あちら側の世界には戻れないことに。
でも――たまに、ごくたまに
いつかこの世界から抜け出せるのではないか――心の奥で、そんな、期待が宿るときがある。
「――何を考えてる?」
黒い目が、俺を観察している。
男は――どう思っているのだろう。今のこの生活を。社会から隔絶された、この異常な世界を。
「……なんでも」
俺は男の首に唇を寄せた。
こうして、男の肌に触れていると、胸中に宿った甘ったれた期待や迷いなんか、あっという間に飛んでいく。
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