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プロローグ

「約束しよう。たとえ生まれ変わってもどれだけ時が流れても、この満天の星空を、君と一緒に眺めると──」  夜空を埋め尽くすように、星が瞬く。  星にだって寿命はある。この星空は、いつか見たそれとは多少変わっているのかもしれない。  だが仰ぎ見る煌めきは、やはり悠久の時を経ても変わらずこうあるような気がする。  それはもう飽きるほど、けれど決して飽くことなく幾度も眺めた夜空を見渡してから、視線を落とす。  その先に、ぽつん、と小さな人影。  ごくりと唾を飲む。言い知れぬ期待と、不安。  どんなに長い間離れていても、絶対に見間違えようもない。とはいえ、姿形はいくばくかは違っていよう。もしかしたら、心も。  置いて行かれた自分は、あれが狂おしいほど探し求めていた人物だという確信がある。だが、相手も同じだとは限らない。それでも。  最初は怖々と、一歩、二歩。徐々に歩幅は大きくなり、最後には駆けだして近付く。  待ち望んだこの時を。訪れるかどうかすらわからなかった、この瞬間を。  堪えるなんてできるはずがない。  その背中まで、あと一歩という距離。手を伸ばし、触れようとしたところで相手が振り向く。 「俺、ちゃんとわかったよ」  確かに、見覚えのある笑顔。けれどこの場に存在しているのは、まるで奇跡で。 「約束、したからな」  喉の奥が、キンと突っ張る。湿り気のある呼気が鼻を刺す。  自分にこんな感情があるなんて、知らなかった。こんな身体の反応があったなんて。  絞り出された声は、言葉にはならず。こみ上げる何かは、抑えようもなく。  逢いたかった、の一言も出てこない。  ただ震える手をゆるゆると上げ、引き寄せて掻き抱く。星降る高い夜空に、咆吼に似た嗚咽だけが響き渡った。

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