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第3話 見られた?

 中学。もちろん兄弟だからクラスは別。 部屋も別。部活も別。別々の時間が増えていく。昔は朝起きた時から、寝る時まで、お互いが隣にいるのは当たり前だったのにね。そんな当たり前はもうなくなってしまった。  だから俺は肇が恋しくて、夜たまに布団で泣いてる。そうすると、自然と来てくれる肇。でも、肇がいないから泣いてるなんて言わないんだ。だって、これ以上嫌われたくない。嫌いだから、別の部屋にするわけじゃないって言ったけど、あの時、ちゃんとした理由は教えてくれなかったよね。プライバシーとかいう言葉でごまかしたんだ。  都筑…学校で辛い事あるのかな?夜、たまに泣いてるんだ。他のクラスだから、都筑が学校でどう過ごしてるか分からない。こっそりと、都筑のクラスにいる部活一緒の友だちに聞いても、変わった事は起きてないし、いじめられてる様子もないって言うんだ。理由を聞いても、泣いてばかりで僕には教えてくれないなんて、僕に頼りきってた都筑ではなくなってしまったのかな。昔みたいに、一番頼りにして欲しいんだよ。  弟離れしなきゃと思ってたのに、こうして一緒にいられない時間が増えたら、ますます都筑の事ばかり考えるようになってしまった。  …そして、いけない事に、初めてのオナニーは都筑の事を考えながらしてしまったんだ…。 やっぱり僕は異常なんだ。そう、自分で実感してしまった…。こんな予感がしてたから、渋る都筑にちゃんとした理由も言わずに、別の部屋にしてもらったのに……  何だろう。見てはいけないものを見たんだ。それは分かる…。  眠れなくて、肇寝てるかもしれないけど、こっそり布団にもぐりこもう。そう思って、肇を起こさないように部屋のドアをそぉっと開けたんだ。あれって……オナニーってやつだよね?しかもさ、俺の名前呼んでた…。えっ、どういうこと。これがプライバシー?俺、嫌われてないってこと?聞いてもいいかな…。でも、聞いて、期待してたような事じゃない事言われるの、怖いよ…。  都筑の様子がおかしい。僕に何か言いかけて黙りこむ。やっぱりこないだ、ドアがそっと閉まった気がしたのは気のせいじゃなかったのかもしれない。都筑の名前を呼んでしてたの、見られたのかもしれない。あんな夜中に親は来ない。僕の布団に潜りこもうとしてくるのは都筑しかいない。どうしよう。気持ち悪いって、きっとそう思ってる。我慢しなきゃ涙が出そうだ。こんな時、もうすぐ部活引退前の試合の為の、朝練があるから、一緒に登校しなくて済んでるのは救いだった。

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