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第4話 cheek or mouth

 1か月たった。部活引退の時期が過ぎ、また登下校も都筑と一緒の日々が戻った。笑い話をしてても、なんとなくお互いぎこちない。 唯一、都筑が泣いてて、寝かしつけてあげる時だけは、穏やかな、今まで通りの2人の時間が流れている気がする。そんな時は小さい頃の話をするんだ。あの時見たあの景色キレイだったね、また行きたいね。家族旅行、おじいちゃんちの田舎。僕ら背が伸びたから、また違って見えるかもしれないね。そんな話をしながら、都筑が眠りについたのを確認して、ほっぺとかオデコに触れるだけのキスをして、自分の部屋に戻る。 「お休み、都筑。大好きだよ」  意識せずに出てしまった言葉。そう、僕は、双子の弟である都筑が大好きなんだ。それも、弟としてだけじゃなく多分……… 「肇、それほんと?」 「都筑……起きてたの?」 「今キスしてくれた?夢?そしたら起きちゃった。ねぇ、俺の事大好きってほんと?俺肇に嫌われてない?」 「嫌うわけないだろ。僕の片割れ、弟なんだから」 「でも肇からの大好きは初めて聞いたから…。大切とかは言ってくれてたけど…」 「僕が恥ずかしがりやなのは知ってるだろ。そんな大事な事…ほいほいとは言えないよ」 「俺も肇が大好き。行かないで一緒に寝ようよ」 「甘えん坊だな都筑は。もう大きくなったのに」 「甘えん坊でもいいんだ。肇がいない方が嫌だよ」 「しょうがないな~。今日は特別だよ?」 「うん」 布団をあけて待ってる都筑。こないだの事見ちゃったんだろうけど、こんな風に受け入れて慕ってくれるんだ。 「肇、もう一回キスして。そしたら寝るから」 ん?これは、僕、理性を試されてる? いやいや、頬っぺにキスくらいはできる。でもその先、口にキスとか臆病な僕には無理。出来ないからギリギリ兄弟のままでいられる。大丈夫。 「都筑、お休み」 額と、頬の2ヵ所してあげたら、満足そうに笑う都筑。 「肇もお休み」 あっ、都筑からもしてくれるんだ。僕のそんな思いは色んな意味で裏切られた。なんと、口にそっとキスしてきたんだ。こっちは驚いたまま固まってるのに、にっこりした笑顔のまま目を瞑って、横向きに僕の方を向いてくっついてる都筑。僕はといえば、口への意味を考えては否定して、眠れない夜を過ごしたんだ……  

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