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第5話 眠れなかった肇
「おはよー、肇」
いつもは僕の方が先に起きるのに、なかなか眠れなかったから今日は都筑が先に起きていた。昨日のキスは、何だったの?そんないつも通りの顔してさ…。
「おはよ。都筑昨日さぁ……」
「昨日?肇がいてくれたからぐっすり眠れたよ」
もしかして、寝入り際で覚えてないのか?
「ねぇ肇、やっぱり寝る時は一緒に寝ようよー。肇がいた方がぐっすりで、朝すっきり起きられたんだよ!」
「昨日は特別だって言ったろ」
「お願いだからさぁ。可愛い弟の頼みだよ?」
「都筑はまだそんな事言ってるの?もう、2人で寝たら狭くて肇の方がぐっすり眠れなかったみたいじゃない。とりあえず2人ともさっさとご飯食べちゃって」
母親に言われた通り、すぐ食べて学校へ向かう。隣で都筑が楽しそうに上機嫌で話してるけど、寝不足と昨日の事を考えてしまって、上の空、まともに返事してあげられない。
「肇具合悪い?」
「あぁ…、寝不足」
「ごめん、狭かったんだね…。じゃぁ、一緒に寝るのは休みの前の日だけで我慢する」
「あぁ、それなら考えるだけ考えとくよ」
「やった!肇好き」
「考えるってだけだからな。ほんとに、狭かったんだから」
「うん、分かってる」
またそんな可愛い笑顔で、こっちを見ないでほしい。昨日の寝る前の都筑を思い出す。こいつ、ほんと覚えてないのかなぁ。
肇…困ってる。きっと、昨日のチューの意味考えてるんだ。少し悩めばいいんだよ。俺は、弟だから側にいてもらえてるだけで嫌われてると思ってずっとずっと苦しかったんだから。肇も少し悩んでくれたっていいじゃないか。
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