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第7話 危うい均衡

 あの夜から数日。僕たちは今日も、オンマが帰ってこないうちに触れるだけのキスを重ねていた。初めてのキスは都筑から。その後は毎回僕から。甘えん坊な弟は、僕に甘やかしてもらうのが好きなんだよね。  いけない事。親にも誰にもバレちゃいけない事。キス以上はしちゃいけない。それは、お互いよく分かってると思ってたんだ。危うい均衡は保たれていると思い込んでた。 「肇、俺さ、前に肇がしてたエッチな事、してほしいんだけど?」 「へっ?!…あんなの、自分でやる事だろ」 「付き合ってる人にしてもらってもいいんじゃないの?」 「僕たち付き合ってるの?兄弟だよ?」 「ふぇっ?だって、肇俺の事好きって…チューもしてくれるのに…」 あーあー、でっかい目に涙溜まってきた。 こうなると、僕にいうこと聞かせるまで、泣き続けようとするんだ。最初嘘泣きだろうと、段々本気で泣いて、顔ぐちゃぐちゃになるまで泣くんだ。 「泣いたってダメだよ、都筑」 「だって、だってさ…」 「もう一回言うけど、僕ら双子の兄弟なんだよ?分かってるよね?」 「わがっでる……」 「じゃぁ、そういう事しちゃダメだよね?」 「肇が~、俺のごど好きって言っだも。だったら、最初から、キスもしなきゃいいじゃん!」 「……………」 「もうキスした時点でおかしいのは、分かってる!俺だってそこまでバカじゃないんだから!なかった事にするなんてヤダ!神様にごめんなさいは後からするから!」 ここで突き放さなきゃ、もう後戻りは出来ない気がする…。でも、こんな泣きながらに僕を説得しようとする都筑は初めて見た。 神様、ごめんなさい。 僕も…。 あとから一緒に謝るから………

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