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第11話 好きなだけなのに

 肇ごめんね、悩んでるよね。俺、誰にも肇を取られたくなかったんだ。分かってるよ、俺だって。こんなことするには、俺達はまだまだ子供だし、男同士だし、双子だし……。難がありすぎ。  でもね、肇は人当たりが良くて、誰にでも優しいから、俺だけに優しいわけじゃないから。きっと肇の事を好きな子がいるんだ。そんな子が肇の隣に並んで、俺の場所が無くなってから後悔したって遅いんだ。どうしたら、どうしたら家族全員で幸せになれるんだろう。 「肇、お帰り」 「都筑…都筑、都筑…」 珍しく泣きそうな顔で俺の肩に額を乗せてきた肇。 「何かあったの?たまには頼ってみてよ。頼りにならない俺だけどさ」 「なんでもない、何もなかったよ、都筑が大好きだよ」 嘘だ。何かあったんだ。溜め込まないで、俺にくらい話してよ。 「話してよ肇…ねっ、俺、聞くくらいなら出来るから。悩み?一緒に分けあおうよ。悲しい事なら半分しようよ?ねぇ、俺達は双子だからそんな事が出来るんだよ。双子で良かった事だよね?」 「……双子で良かっ、た?こんなに好きなのに?ただの男同士ってだけなら、こんなに悩まなかったかもしれないのに?都筑が好きで一緒にいたいのに、世間から許されないんだよ?!誰も分かってくれないんだよ?!ただただこんなに好きなだけなのに!」 こんなに号泣してる肇は初めてだった。 いっつも俺が泣いて、肇が宥めてくれてた。いつもどうやって俺の事宥めてくれてたんだっけ?あっ。とりあえず両手を、向かい合ってた肇の背中に手をまわして、背中を擦る。 「苦しいよね。でも俺も肇がいればいいんだ。ごめんね好きになっちゃって」 「僕が、好きに、ヒック、なっちゃったから…」 「俺の方が先に好きだったよ」 「僕が先…」 「俺が…」 変な意地の張り合いに思わず目と目があって、笑いが起こる。どうしたらいいか分からないんだけど、今は目の前の、この幸せに浸りたかった……。

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