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第二章 運命②
翌日、目が覚めたのは昼の十一時だった。結局昨晩はあれからコンビニ周辺をうろつき、帰宅したのは深夜二時。窓から太陽光が直接部屋に入ってくるせいで、視界がちかちかする。眩しい。
昼飯を準備していると、コンコン、とドアを叩く音がした。祈はちゃぶ台の上の財布から万札を数枚取り出すと、玄関の扉を開けた。
「あい、こんにちは。元気かね?」
大家の老爺 がいつも通りの台詞を吐く。祈の部屋のインターフォンは壊れているので、大家はいつもこうしてドアを叩いて知らせにくる。祈は黙って頷き、用意した万札を手渡した。この部屋の家賃は引き落としではなく現金手渡し。時代錯誤もいいところだが、そのぶんこの大家は余計な詮索をしてこない。それどころか、未成年で保証人もいない祈を、数年前からここに住まわせてくれている。寛容を過ぎてもはや不用心の領域だが、祈のように身寄りの人間がいない者、または色々と訳ありの人間にとって、大家のような存在は正直有り難い以外の何物でもない。
「じゃあまた来月ねぇ」
先月と全く同じ言葉を放ち、大家は帰っていった。祈は台所に戻る前に、壁に貼り付けていたカレンダーを眺めた。大家はきまって毎月一日にやってくる。今日もそうだ。祈は先月分のカレンダーを切り離すと、八月一日――今日の日付をじっと見つめた。――あと、一ヶ月。
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