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第三章 少年①
ドンドン。ドンドン。
扉を乱暴に叩く音が、微睡みの中にいる祈の耳に届く。
ドンドン。ドンドン。
音は、しつこく、鳴り続ける。部屋の主である祈のことなど、全く意に介さぬかのように。
ドンドン。ドンドン。
音の主は、どうやら、諦めるという言葉を知らないらしい。そして、近所迷惑という言葉も頭にないようだ。
「あー、クソ!」
祈は、まだ眠気が充満している身体を無理やり起こし、苛々しながら大股で玄関へ向かった。
扉を開けると、少年がぷんぷん、と腰に手を当てて立っている。
「もう、おそいよ! イノリ!」
「……おい、まだ朝の七時だぞ?」
「ちゃんとはやねはやおきしないとだめだって!」
――あぁ、うざったい。うざいったらありゃしない。祈は髪をぐしゃぐしゃと掻き毟ると、盛大に舌打ちをした。
「……もういいから、早く入れ」
「はーい! おじゃましまーっす!」
少年は待ってました! とばかりに部屋の中へずんずんと入っていく。その小さな後ろ姿を見て、祈は過去の自分の行動をひどく、悔いた。
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