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第四章 青④
「これ、忘れていったぞ」
翌日の夕方。帰る準備をしていた碧志に折り紙を渡すと、祈の予想通り、彼は苦い顔つきをした。
「あ……うん。あり、がと」
こそこそとズボンのポケットにしまう。
「お前、いつの間に誕生日になったんだ?」
「あ、えと……この前の日曜日」
祈は腕を組みながらカレンダーを見る。八月七日だ。
「ふうん」
碧志は、どうにも居心地が悪いのか、畳の一点を見つめ、祈と頑なに顔を合わせようとしない。
「お前さ、自分の誕生日、嫌いなの?」
ぱっと、碧志が顔を上げた。血の気が引いた真っ白な顔。そして、ぽっかりと空いた穴のような、真っ黒な、目。祈は彼の顔を見て、ぞくりと得体の知れない恐怖を掻き立てられた。あのときと同じだ。「――僕、親、いないよ」そう答えたときの、感情という感情が一切削ぎ落された、無の表情。
「……っ」
何故――聞いてしまったのだろう。祈は、そこでようやく我に返った。自分らしくない。碧志が、自分の誕生日に対して、何やら、負の感情らしきものを抱いている。そんなもの彼の表情や反応を見ればすぐに分かった。だったらそれ以上踏み込むことなんてない。無理に問いただす必要なんて、ない。なのに何故、俺は――
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