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第六章 救い③

 いつの間にか、碧志が自分の手を握っている。少年は、そっと目を細めて祈を見上げている。子供らしくない――憂いと慈愛をにじませて。どことなく、生前母が見せていた表情に似ていて、祈は不思議な感覚に陥った。 「僕は、イノリのとなりにいるよ」  自分の手を包み込むようにやさしく握る、少年の肌は、確かに温かかった。 「でねっ、イノリがなんかあったときは僕が守ってあげるから! ね!」  碧志が意気揚々と、祈にその細い二の腕を見せつけ、力こぶ(らしきもの)を作ってみせる。 「……お前は子供だろうが。どうやって年上の俺を守るんだ」 「だいじょうぶ! イノリがぴんちのときには駆けつけるよっ!」  はじけるように笑う碧志の髪を、ぐしゃぐしゃとかきむしる。 「わ! ちょっとイノリ! やめてよっ!」 「バーカ。十年早えよ」 「むうッ! じゃあ十年後! 二十歳になったら僕に守らせてくれる?!」 「……そのとき俺が覚えてたらな」 「ずるいッ!!」  ――と、そのとき、コンコン、と、ドアが鳴った。

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