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第七章 覚悟①

 その日の晩、風呂からあがると、祈はタオル片手に、壁掛けカレンダーの前へ立った。今日の日付――八月十四日にペンで斜線を引く。あと、十八日。ポタポタと、毛先から垂れる水滴も気に留めず、じっとカレンダーの日付を見つめる。  ――いつか、自分が碧志に投げかけた言葉が蘇る。 『お前さ、自分の誕生日、嫌いなの?』  ……そうだ。自分は、心のどこかで――無意識に、期待していたのかもしれない。『彼』も、自分と同じように、己の誕生日に対して――己の命や、人生そのものに対して、何か――消極的な考えを、抱いているんじゃないかと。  ――最低だな、俺は。  祈はひとり、乾いた笑いを漏らすと――唇を嚙み締め、何かから逃れるように、苦し気に目を瞑った。

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