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第七章 覚悟⑦
その日から、祈は自分の二十歳の誕生日を目標に、生きるようになった。相変わらず小説を書くことはできなかったが、代わりにスケッチブックを買ってデッサンするようになった。昔から、目の前の景色を切り取るのが、好きだった。死ぬまでにあと三年と思うだけで、少しばかり気が楽になった。終わりの見えない生は、祈にとって地獄同様だった。
そうして待ち侘びて、待ち侘びて――三年。ようやく、十九歳――最後の八月がやってきた。あと一ヶ月。一ヶ月でもう終わりなんだ、終わりにできるのだ――七月のカレンダーを切り離し、何も書き込まれていないきれいな八月のカレンダーを見たとき、祈の全身からは安堵と高揚がこみ上げてきた。
けれど――
「クソ……っ」
祈は苦虫を噛み潰したような表情でカレンダーを睨むと、壁に、勢いよく拳を打ちつけた。ドン、と鈍い音がした。その衝撃で、首元の十字架が、きらりと揺れた。祈の右手から、握っていたペンが滑り落ちた。
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