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第九章 現実と真実⑤

「わたあめ屋さん、なかなか見当たらないね」  りんご飴をかじりながら、碧志が言う。 「そうだな」  ずらりと並ぶ屋台を横目に歩いていたそのとき、前をゆく人の足が止まり、祈と碧志も自ずと進行を停止せざるを得なかった。  つと、周りを見渡すと、屋台を眺めながら歩く他の客たちも、皆、足を止めている。まるで、テーマパークのアトラクション待ちで長い行列ができ、それがなかなか進まず、渋滞ができているみたいだった。がやがやと、ざわざわと、他の客たちもその顔を曇らせながら、話をしている。「なんで急に止まったんだろう?」「進めないよ」「酔っぱらいでもいるのか?」  隣に立つ碧志と目が合った。『急にどうしたんだろうね?』と、彼の顔も言っている。  ――何かあったのだろうか。  前にいる職員に聞くと「あ……なんか」と、彼女は前方を指差した。  よく耳を澄ませると、遠くから、割れるような叫び声が聞こえてくる。祭りという平和で賑やかな場にふさわしくない、不穏な空気。祈は、ぴくりと眉を顰めた。 「喧嘩……?」 「かも、しれません」  道のど真ん中で喧嘩。だから歩行者も前に進めないというわけか。しかもこの声、もしかすると――

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