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第九章 現実と真実⑨
人を裏切るようなことは、しないし、したくない。それが、幼い頃からの、彼女の信条だった。何故なら、彼女の母親が、父に裏切れ、泣き崩れる姿を見ていたからだ。
そんな彼女に、生まれて初めての恋人ができた。自分から告白し、オーケーをもらい、めでたく付き合い始めた。彼女は、彼と色んな場所を巡っては、その若い心に、これでもかというほど嬉しさと喜びを噛み締めた。人と愛し合うって、こんなに幸せなことなんだ、と、彼女は思った。この時間が、永遠に続けばいいのに――と。
初めて彼とデートに行ったとき、彼は、ジュースを奢ってくれた。青と白の水玉模様の、甘い甘い、ジュース。彼女はそのジュースが大好きだった。甘くて、爽やかで、舌に溶け込む優しさが、飲むたびに、彼女の心と身体を癒やしてくれた。
しかし、ある日――彼女は、見た。自分の恋人であるはずの彼が、彼女の親友である女性と腕を組んで街中を歩いている姿を。
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