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第九章 現実と真実⑭
戻ってきた祈の姿を認めると、施設の子供たちや職員は安堵の息を漏らし、皆、彼の元に駆け寄った。
「祈さん、大丈夫でしたか? その、お怪我とか……」
職員がおそるおそるといった様子で、祈に声をかける。
「大丈夫です。怪我もしてません。それより、こちらこそすみません。せっかく楽しい時間なのに、こんな形で中断させてしまって」
祈の言葉を聞いて、職員はようやく胸を撫で下ろし、ゆるやかに笑みを浮かべる。
「いえ、それは全然、気にしないでください。祈さんが無事で何よりです」
――と、そんな大人たちのやりとりをよそに、子供たちが次々と声を上げる。
「イノリ! ケンカとめたんだって!? かっけー! ヒーローみたいだなっ! 次はおれも連れてって!」
「イノリン! もしもわたしがピンチになったときは、さっきみたいに、かっこよくたすけてね! で、お姫様だっこしてね!」
しかし、こういうとき、いの一番で駆け寄ってくるはずの碧志が、何故か遠巻きに自分を眺めている。そして、皆が祈にひとしきり声をかけ終わると、碧志がてこてこと近づいてきた。
「ねぇ、なんであの、おんなのひと、あんなに怒ってたの?」
どうやら彼も、事の一部始終は把握しているようだ。
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