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第十一章 願い①
全く策士なクソガキだ、と思う。祈は、この日のために用意した水着や浮き輪を両手に抱え、炎天下の中、市民プールの入り口にひとり、立っていた。
『――ということで、プールに連れてって!』
『……は?』
『イノリとプールにいっしょに行かないと、僕のこの機嫌はなおりません!』
『っ、おい、お前――』
それってただお前がプールに行きたいだけじゃないか――
『え? もしかして僕に反論するつもり? あのおじさんを逃がしちゃったおとな失格のイノリが?』
――思い出すだけで、祈の口から鋭い舌打ちが漏れる。畜生、あのガキんちょめ。俺が反論できないからって、これでもかというほど鼻の穴を膨らませて、高飛車にふんぞり返って俺を見下したあの態度。一生忘れねぇ。
『はいっ! ということで、明後日! プールにいくから! イノリもちゃんと、じぶんの水着を用意しておいてね!』
マジであいつのちゃっかりクソ生意気な性格はどうにかならないのだろうか――じりじりと照りつける太陽の下で、祈は考えていた。すると、遠くから子供が四、五人、集団でわいわいと群がってこちらにやってくるのが見えた。
――おいおい、ちょっと待て。祈のこめかみから、冷や汗がたらりと流れる。
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