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第十一章 願い②
「あ! イノリー!」
集団の中にいた碧志が、ぴょんぴょん跳ねながら祈に向かって手を振っている。
「おい、お前……今日はひとりで来る予定じゃなかったのか?」
碧志の周りには、祭りのとき一緒に来ていた施設の子供たちもいる。
「うん! そのつもりだったけど、イノリとプールいくっていったら、みんなもイノリにあいたいっていうから、みんなで来たの! イノリもそのほうがたのしいでしょ!?」
にっこにこの純粋な笑顔を浮かべる碧志に、祈はくらりと眩暈がした。子供が苦手なのに――今日一日こいつらの面倒を見なきゃいけないなんて――
しかも――
「イノリン! 今日もイケメンだね! イノリン細マッチョだったらうれしいなぁ! わたし、細マッチョがタイプなんだよねっ」
「おいイノリ! おれの名前、ちゃんと覚えてる!? リクトだよリクト!」
――うるさい。とにかく、うるさい。
祭りのときも思ったが、子供とはこんなにうるさい生き物なのか。碧志もたいがいだが、子供が二人以上集まるとなんでこんなに騒がしくなるんだ?
「さ! プールにれっつご~!」
「「「ごー!」」」
碧志が声高らかに叫ぶ。それに呼応するように、ほかの子供たちも天に拳を突き上げた。その様子を少し離れたところで見ていた祈は、がくりと項垂れ、そして――深い、深い、ため息をついた。
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