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第十一章 願い⑥

 ――ねぇ、祈。  ――なあに? おかあさん。  ――お母さんね、祈にはずっと笑って生きていてほしいの。  ――うん。  ――だから、お母さん、神様にお祈りしておいたから。  ――なんて?  ――祈が、笑顔いっぱいの人生を送れますようにって。 「……っは」  祈の口から、漏れた。 「……っ、あ、はは!」  ――気付けば祈は、顔をくしゃくしゃにして、笑っていた。 「あーははっ! ははは……!」  身体の底から、笑いが止まらない。涙さえも浮かんできて、祈はこらえきれずに腹を抱えて大きく口を開けていた。  周りの子供たちも、一緒になって笑う。笑い声は、止まない――たまらなく幸福な気持ちが、彼らの心と身体をそのいっぱいまで埋め尽くし、八月の夏――賑やかなプールの、その一角で――幸福な風景を映し出していた。

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