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第十二章 約束③
ショップを出ると、ちょっと待ってろ、と碧志に言いつけ、祈は近くの公衆電話に向かった。出版社に、一週間ほど連絡を取ることが難しくなる、ということ、それともう一つ――
電話を終えて戻ると、碧志はにこにこと満足気に笑って祈の顔を見上げた。
「イノリ、かっこいいスマホえらべてよかったね!」
「あぁ、お前のおかげだ。助かった」
もし碧志がいなかったら、なかなか機種を選べずに店員を困らせていたかもしれない。多少の経験値や知識があれば即断できるが、こうも未開の領域になると、途端に立ち止まってしまう。普段は表に出にくい、祈の臆病なところだ。
店員からもらったスマートフォンのパンフレットをたたんで、ズボンのポケットにしまうと、祈は、言った。
「碧志、お前、明日からしばらくうちに来るな」
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