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第十三章 八月三十一日⑦

「あともういっこ! プレゼントでーす!」  色紙を渡したあと、碧志がそう叫んで、バッグから取り出したのは―― 「あ」 「遅くなってごめんねっ! せっかくあたらしいやつだから、おたんじょうびギリギリに渡したくて!」  カレンダーだった。ちゃんと八月分までは切り離され、一番表に九月のページがある。 「えへへっ、いろいろあって迷ったけど、やっぱりこれにしちゃった!」  碧志が照れながらそう言う。そのカレンダーは美しい海の写真が全面に映し出されたものだった。祈は、ふと、息をするのも忘れて、しばらくの間、目の前の海をじっと眺めていた。 「……なんで、これにしたんだ?」 「あのねっ、まずこの海がすっごくきれいだなーって思って! スマホといっしょで、イノリの目の色とおんなじだーって思ったの!」 「……うん」 「それとねっ……」  碧志がなぜかそこで言い淀んだ。祈がちらりと彼を見ると、彼は祈の表情を窺うような、上目遣いの視線を祈に送ってくる。 「……あ、あのねっ! 今年はいっしょにプール行ったから、来年はイノリとこんなきれいな海に行きたいなぁって!」  その言葉に、祈の青い瞳がゆっくりと見開かれる。

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