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第十三章 八月三十一日⑧
手の中に、美しいオーシャンブルーがあった。想像する――来年、二十歳になった自分と、今よりもっと成長した碧志が、この眩しい浜辺で、この透き通った青い海で――二人、笑い合う姿を。あの日、夢で見た光景――あの夢の続きを、今度は、この、現実世界で。
「――いいな」
その碧眼にやさしい光を灯して――祈は、柔らかく、微笑んだ。
「っ、でしょでしょ!? ほんと、ぜったいいこうね!」
「あぁ」
――そのときは、碧志が選んでくれたあのオーシャンブルーのスマートフォンを持っていこう。そして、あの日見た夢と同じように、海辺で貝殻を見つけて、たくさんはしゃいで、無邪気に笑う彼の姿を、たくさん、たくさん、写真に撮ろう。そして、自らの目に、どこまでも、焼き付けておこう。母親がかつての旧友と過ごしたように、あそこで過ごす時間を、それこそ永遠と感じられるほど――碧志と、目の前に広がる海と共に、どこまでも、いつまでも、胸いっぱいに、身体いっぱいに、幸福を噛み締めて、笑顔で、彼と、過ごしたい。母親の――彼女の人生が、その思いが全て詰まったあの場所で。
祈は、そう、思った。たしかに、願った。
これからの人生を、彼と共に過ごそう、と。彼と、過ごしてゆきたい、と。心の中で、固く、誓った。
祈が、小指を立てる。碧志がきょとんと、首を傾げた。それを見た祈が、低い声で、ぽつりと問う。
「……指切りげんまん、しないのか?」
「っ、する! するするっ!」
いつかと同じように、彼らは指切りげんまんをする。お互いの肌が温かく、心地よく触れ合って――祈は唄いながら、頬がゆるんで、自然と口角が上がってしまうのを、どうしても抑えきれなかった。
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