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第十四章 監視③
母との同居生活は、六年続いた。福本が、高校卒業後は上京したいと伝えると、やっぱり母は泣き喚いた。だが、福本は、一刻も早く彼女から離れたかった。彼女とこれ以上一緒にいると――本当に気が狂ってしまう。母が心配だという気持ちも少なからずあったが――しかし、それ以上に、まだ思春期の福本の精神状態は、もう限界に近かった。本がなければとっくのとうに、母と共に正気を失っていたかもしれない。
高校卒業の直前のことだった。卒業式の予行演習のため体育館にいた福本に、真っ青な顔をした担任教師が駆け寄ってきた。「福本くん。お母さんが――」
母は、赤信号にも関わらず横断歩道をふらふらと歩いていたところを、やってきた大型トラックに、文字通り、一瞬で、潰された。血まみれの肉の破片となって自分の前に再び現れた母を見て、後悔よりも悲しみよりも――恐怖が、福本の背筋を凍らせた。母が自分に囁いているような気がした――「ねぇ、わたしがこんなになっても、わたしを置いていくの――?」と。そんな呪いから逃れるように、本に没頭した。
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