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第十六章 碧色の涙②
――なんだ……やっぱり、そうなんじゃないか。結末なんてものは、最初から決まっていて、結局それは、自分ひとりの力で覆せるものではないのだ。自分がどれだけ明日を求めようと、未来を生きようと決意しようとも――母が、どれだけ神に祈っても、精神の病に、打ち勝てなかったのと同じように――未来なんてものはそもそもなく、運命は、結末は、最初から定められていて、自分たち人間は、その最終地点に向かって、レールの上をただ歩いているに過ぎないのだ。
「っ、くそ……!」
――だったら、せめて……せめて。
床に這いつくばりながら、ずるずると腕の力を使って移動する。荒い息と涎が口から喘ぐように漏れる。腹から滾々と溢れる血が、畳にべっとりと歪な跡を残す。全身がぶるぶると、異常なほどに震えている。が、構わず、祈は懸命に腕を動かす。
「っ、は」
震える手で、押入れを乱暴に開く。布団やら服が置いてある。その奥――碧志が間違って見つけてしまわないように、隅に隠していた古びた木箱に手を伸ばす。箱の角に、小指がぶつかる。ゆっくりと手のひらを開いて、指一本一本で、箱をしっかり握り、そして胸元へ引き寄せた。肩で息をしながら、祈は箱の蓋を開いた。
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