137 / 180
第十六章 碧色の涙④
――すぐに、出版社から連絡が来た。正式に単行本として出版してみないか、という誘いだった。流されるままに、了承した。本が出た。売れた。賞を取った。持て囃された。また、売れた。二冊目も、三冊目も、売れた。中学を卒業すると同時に、施設を出た。稼いだ印税で、ひとりで生活をするようになった。毎日、部屋にこもって書いていた。筆が止まらなかった。取り憑かれたように、書き続けた。人生に、絶望していたからかもしれない。そして、施設を出て一年経った頃には、ぱったりと、書かなくなった。いや、書けなくなった。急に――全てがどうでもよくなってしまった。
そこから、来る日も来る日も、生を持て余す空虚な毎日を過ごすようになった。部屋の窓から、家庭と社会を行ったり来たりする人々を見つめながら、己が何をせずとも巡る朝と夜をぼんやりと眺めながら――ある日、決意した。
『――二十歳になったら、死のう』
そう、密かに決めた。
自分の中で、腑に落ちた終わり方だった。逆にゴールが見えたことで、少しだけ、生きる気力を取り戻した。
だが、実は過去、一度だけ――先走りそうになったことが、あった。
ともだちにシェアしよう!