154 / 180

第十八章 罪人⑦

 男は一人――電車に揺られていた。終点までの最終便。もう外の景色は堪能できないほどに、暗く、深い闇に覆われている。自分以外誰も乗っていないがらんとした車両。かぶっていたフードを外すと、男は、息を吐き、ゆっくりと目を瞑った。  まだ、到着するまでに時間はある――瞳を閉じていると、十年前の記憶が、徐々に、男の脳内に、浮かび上がってきた。

ともだちにシェアしよう!