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第十九章 青の時間⑭
夏祭りの日、碧志は、見知らぬ男に連れていかれそうになった。大きな体躯の男だったので、力では全く敵わなかった。ずりずりと、暗闇へと引きずられてゆく。必死に抵抗する。でも――あぁ、もう――そう思ったとき、汗だくの祈と目が合った。彼の青い瞳は、碧志を真っ直ぐに捉えていた。
『碧志っ!!!』
十年経った今でも、鮮明に思い出せる。祭り会場からいなくなった自分を、血眼になって探し回り、ようやく見つけたあの瞬間――自分の名を叫んだ、祈が初めて見せた、本気の表情を。
あの刹那――彼の視界には、碧志ただひとりしか映っていなかっただろう。目が合った碧志にもそれが伝わった。彼は碧志を全力で助けようとしていた。だから、碧志の脳内にはある疑問が生まれてしまった。
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