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第十九章 青の時間⑯

 彼は、言っていた。 『お前は、ひとりじゃない』 『忘れるな――困ったときは、みんなに、頼れ。遠慮なんていらない、ちゃんと、助けてもらうんだ。で、お前もみんなを助けてやれ。そうやって――助け合って、生きていく。それが、家族ってやつだ』  彼は、心のどこかで見抜いていたのかもしれない。碧志が、自分という人間に対して、価値も意味も愛情も見出していないことに。そして、他人からの助けを、求めずに――求めようとするもっと手前で、そういう他人に期待する淡い心を、自動的にそっと打ち消して、ひとり、何事もなかったかのような顔をする自分を。 『お前にとって、家族って何だ?』  ――瞼を上げて、自分の手のひらを見つめる。施設のみんなは、今、どこで何をしているのだろう――あそこを出てから、もうずっと、会っていない。  終点のアナウンスが鳴った。碧志は立ち上がり、寂れたホームに降り立つと、真っ暗な駅を、ひとり、出ていった。

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