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第三章 少年⑥
そのまま暫く、じっと、固まったまま、カレンダーの日付に視点の照準を合わせる。窓の外から、烏 の鳴き声が聞こえた。祈は、その声を、ひとり、背中で受け止めた。
そっと、腕を上げ、今日の日付に、上からマジックペンで斜線を引く。あと――二十七日。
緊張から解けたように、だらんと投げ出した祈の右腕は、かすかに震えていた。
『――生きてることに飽きたんだろ? 未来に希望なんて見出せないんだろ?』
『――だから自分を殺して人生を終わりにするって決めたんだろ?』
祈は悩ましげに顔を歪め、唇をきつく噛み締めた。その表情を隠すように、額に左手を強く押し当てる。
夕焼けの空を飛ぶ烏がその存在を知らしめるように、再び、激しく声を上げた。人々の耳をつんざく、悲鳴のようなその叫びは、不穏な何かを予言しているようでもあり、まるでこの世の終わりを告げるような、不気味で不快な音色だった。
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