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第7話
次の日、はるは昼休みになっても来なかった。
あんな別れ方の後だから、当然連絡がくると思っていたし、昼飯も一緒に食べるものだと思ってた。それなのになんの連絡もなく、次の日もその次の日もこなかった。気にしないようにしようとしてもはるの事が気になって胸がザワつく。
「あの、朔間くん…黒瀬先輩?が呼んでるけど…」
休み時間にスマホを握りしめながら連絡しようか迷っていると、クラスの女子にそう言われて顔を上げた。
ーーー黒瀬…?
黒瀬という苗字になんとなく聞き覚えがある気がしたけど思い出せなくて、本人を見てからハッとした。
「はじめまして…じゃないよね?朔間くん」
「ども…」
「ふふ、ちょっとツラ貸して」
ーーーえ、俺ボコられるんだろうか…?
最初の印象は茶髪で綺麗で小柄な女の子ってイメージだったのに、今は敵意なのかなんなのか俺に向ける微笑みが怖かった。
呼ばれてついて行った先は、屋上へ続く階段の踊り場。よりによってここかよ…そう思いながら小さく溜息をつき、階段の前で立ち止まった。階段の上の方に腰掛け足を組んだ先輩は俺を少し見下ろす。
「私の事、覚えてるかな?」
「……はい」
「黒瀬真由、あやちゃんの…まぁ、いいや。」
その後の言葉を濁すした先輩。知ってますよ、はるとそういう関係だったことは…特に何かある訳でもないのにチクッと胸が痛む気がした。
「…察してるとは思うけど、話っていうのはあやちゃんの事なんだよね。何か知ってる?」
「え…何か…?」
「あやちゃんここ2、3日学校来てなくて…連絡しても既読にすらならないし……今までこんなこと無かったのに…」
「え!?学校、来てないんすか?」
俺の言葉に驚いたような表情を見せる先輩。一瞬考え込むように目をそらすとボソッとなにか呟いた。
「……なるほど、ね…」
「すいません、俺何も知らなくて…はる…ぁ、綾川先輩体調悪いとかですか?」
「……先生は風邪って言ってた。でもそれくらいで私の連絡無視するような子じゃないの…だからもしかしたら君なら何か知ってるかなって……」
「……あの、なんで俺…なんすか?」
「え?」
階段で一瞬見かけた後、はるの教室で一言二言交わしただけなのになんでわざわざ俺のところに来たんだろう。些細な疑問だった。
「え…ぁ、前に、あやちゃんの所にきてたし仲良さそうだったから…」
何故か少し歯切れが悪く気になった。何か知ってるんじゃないかと思い口を開こうとした瞬間。それを遮るように先輩は言った。
「ねぇ!朔間くん!!あやちゃんの様子見てきてくれない?」
「は?なんで俺が…先輩が」
「気にならない?あやちゃんのこと」
何も言えなかった。正直あの日からずっと気になってるし、はるに何かあったら…そんな事が一瞬頭をよぎる。
「……わかりました」
よしっ!と満足気に笑う先輩はさっきまでの雰囲気とは少し違って何処か嬉しそうに見えた。不思議な人だな…と、その時は気にも止めずに先輩の背中を見送った。
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