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3-2.旅行の準備
僕は海外旅行未経験だけど、宗吾は出張も含めて海外へも行き慣れているようだった。それだけでも十分頼もしい。
ただし、今回は0歳児連れだ。普通の旅行とはひと味もふた味も違うだろうことが予想される。
まずは僕と匠実のパスポートをつくるところから始まった。
申請用の写真は0歳の匠実の分も必要だった。
調べてみると無地のシーツの上に寝かせて自分で撮ることも可能らしいけど、ちゃんとうまく撮れる気がしなかったのでスタジオで撮影してもらうことにした。
行ってみるとプロはやはりさすが赤ん坊をあやすのにも慣れていて、無事笑いすぎても泣きすぎてもいない、指しゃぶりもしていない顔写真を撮ってもらえた。勿論そこで僕自身の写真も撮ってもらった。
そしてネットで調べた通りに戸籍謄本や住民票を取ってから、申請書はダウンロード様式に記入後プリントアウトしたものを持参し、平日に僕1人(と抱っこ紐で匠実も同行)でなんとか申請することができた。
申請した帰りに本屋さんに寄って何冊か旅行雑誌やグアムに関する本を買った。
これだけでなんだか一仕事終えたような気持ちになる。
「匠実~わくわくするね」
子どもが出来てから独り言が増えた気がする。でも今は匠実に話かけたんだよ。
「あ、パパにも無事申請できたよって送っておこうね」
僕は電車の中で宗吾にメッセージを送った。
◇◇◇
家に居て家事をしている時間以外は最近は子連れでグアムに行った人の口コミをこまめにチェックしている。実際行った人の話はやはり参考になる。
「レトルトのベビーフードを持っていけばいいんだな。なるほど……」
現在生後8ヶ月の匠実は離乳食が1日2回、ミルクは1日5回飲んでいる。ずりばいをし始めて、今はまだ前に進めず後ろに下がっていくのが面白い。自分で向きも変えられるので結構楽しそうに床中這い回っている。
自分の意志で移動できるようになってきたので、うかつに床に物を置いておけなくなってきたところだった。
旅行の予約は2ヶ月先で生後10ヶ月にあたるから、その頃にはハイハイしてるかもうつかまり立ちしているかもしれないな。
でもまだ歩き回れないから、飛行機もそんなに苦じゃないはず。
ミルクは基本は粉で、もしお湯が手に入らない場合を考慮して少しだけ液体のも持って行こう。
食器用洗剤とスポンジは持参する……と。
僕は必要な持ち物などをメモしていく。
そうやって過ごしていたら宗吾が帰宅したので匠実を抱いて出迎える。少しの間でも僕の姿が見えなくなると最近不安がって泣くのだ。トイレに行くのですら泣かれるのでちょっとつらいものがある。
「おかえりなさい」
「ただいま……」
「あれ?どうしたの。元気ないね」
「ちょっとトラブル続きで……はぁ~~うちの奥様は本当にいい匂いだ。癒やされる……」
宗吾は匠実ごと僕を抱きしめた。その後匠実を僕の手からさっと奪い取って抱っこする。
「匠ちゃん~パパだよ。匠実もミルクのいい匂いだけど、やっぱりママの匂いはとってもいい匂いだよねぇ?パパも大好きなんだよ」
「いや……匠実は別に僕の匂いなんてなんとも……」
僕が笑いながら言うと宗吾真顔で否定してきた。
「何言ってるんだ!ママの匂い最高って思ってるに決まってるだろう」
い、勢いが怖いんですけど。
「で、おかえりのキスしてくれないのか?傷心の夫を慰めてくれ」
「お疲れ様、宗吾」
僕は少し背伸びして宗吾にキスした。すると満足したように彼はバスルームに匠実を連れて行った。
まったく、相変わらず匂いフェチな旦那様なんだから。
お風呂の後で夕飯を食べつつ決めたことがある。この週末は少しずつ遠出するのに慣れておこうということで、1泊旅行の予定を立てたのだ。あまり無理のない移動距離とするため小田原のホテルを予約した。
考えてみたら匠実は自宅以外に泊まったことがなかったんだよね。
「今度おじいちゃんのお家にも泊まらせて貰おうね~」
来月お義父さんのお宅にも1泊させてもらうことになった。幸いなことに匠実は夜泣きをあまりしないタイプで朝まで一度も起きずに寝てくれる日もある。なのでお義父さんにもそれほど迷惑はかけないで済むと思う。
環境が変わってもちゃんと寝られるかな。
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