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3-3.いよいよ出発

週末の1泊旅行は無事に楽しく過ごすことが出来た。ホテル内にプールも有ったけど、1歳未満は使用が出来なかったため匠実はキッズルームで這い回るという遊びを楽しんだ。 夜は部屋のバスルームで匠実をお風呂に入れ、僕たちは交代で大浴場にも行けた。 これまであまり旅行に興味が無かったけど、外泊すると自分で食事の支度をしなくていいし片付けもしなくて良いから思ったより楽で良かった。 匠実も時間さえきっちり守れば部屋が変わってもちゃんと眠ることができた。 その後義父の家でも変にぐずることなくお泊りできたので旅行の準備としては上出来だろう。 ◇◇◇ ある日、叔母のしほりさんから電話がありまた家に来てもうことになった。僕たちの住まいの近くにボイストレーニングの教室があってそこに月に数回通っているらしく、たまに連絡をくれるのだ。 教室の後に時間がある時はこうして匠実の様子を見がてら遊びに来てくれる。僕は今度行く旅行について話した。 「あら、新婚旅行?いいじゃないの!」 「ええ。僕、旅行自体あまりしたことがないし海外は初めてなのですごく楽しみで」 「まぁ、そうだったのね~。グアムなら近いし匠実ちゃん連れでも安心ね。日本人の旅行客も多いから現地の人も慣れているし」 「そうなんですね」 「楽しんできてちょうだいな」 「はい」 「仲良くやっているみたいで安心したわ」 しほりさんはにこにこしながら僕と匠実を見つめた。 「お陰様で。しほりさんが結婚式のとき手を尽くしてくれたので宗吾の親戚からも何も言って来なくなりましたし」 「そう?それは良かった。あなたは今まで大変な思いをしてきたんだから、これからは人生楽しまないとね」 しほりさんは子連れでも行きやすいグアムのお店をいくつか教えてくれた。お孫さんと一緒に家族で行った事があるらしく色々話を聞けてよかった。 僕たちが宿泊するホテルにも以前泊まったことがあるとのことで、赤ちゃん連れでも過ごしやすいから安心してと言われた。 ◇◇◇ その後も持っていくものの準備や現地で行く場所を調べたりしているうちに時は過ぎ、とうとう旅行当日を迎えたのだった。 申し込んだツアーは飛行機とホテルのパッケージで、添乗員は無しの3泊4日。現地空港からホテルまでの送迎付きで、滞在中は帰るまで自由行動という内容だ。 宗吾と2人で話し合った結果、乳幼児連れなので滞在中は時間が決まっているツアーに参加するよりただホテルや海、プール等でのんびりするのが良いだろうということになった。 ホテルの周辺は免税店や飲食店も多く、ちょっとしたお土産を買うのも遠出せずに済みそうだ。ツアーの特典として現地でベビーカーを借りられるので、自宅からは持っていかず抱っこ紐だけ装着して行く。 飛行機に乗るのは修学旅行以来だ。 しかも僕は国内線しか乗ったことがないので、成田空港に行くのは初めてだった。 テレビくらいでしか見たことのない国際線のターミナルにちょっと圧倒されながら宗吾に続いて歩く。今回の荷物は宗吾曰く「大人2人だったらヨーロッパに1週間くらい軽く行ける量」らしい。 乳幼児連れなのでどうしても多くなってしまうんだよね。 オムツはかさ張るし、レトルトの離乳食や、すぐに汚すから着替えも大量に持って来ている。洋服は現地でも調達できるみたいだったけど、慣れてないから一応……と思ったらすごい荷物になってしまった。機内に持ち込む荷物も、3時間半のフライトとはいえやはりいつものお出掛けと同じくオムツやぐずったときあやすためのおもちゃなどを入れたらリュックは一杯になった。 僕はこれまではあまり物を持たない主義だったけど、子どもができるととにかく物が増える。宗吾のマンションもシンプルでモダンなデザインの家具で揃えられていたが、今では子供向けの可愛らしいデザインの物で溢れている。 事前に郵送されてきた案内に従い、まず旅行会社のカウンターでチェックインしてもらってから航空会社の手荷物カウンターでスーツケースを預ける。 その後保安検査場へ行く前に空港内で日本円を少しだけUSドルに両替した。現地ではカード支払いが基本だけど、チップや細々としたものの支払い等である程度現金も必要らしい。 僕はキョロキョロするだけで、手続きの類は全部宗吾がやってくれた。 「よし、志信が特に用事なければもう搭乗口の方に行こうか」 「うん、僕はもう大丈夫」 「出国審査後のエリアにも店はあるし、搭乗前にオムツ替えするのも向こう側でいいから」 「わかった。じゃあ行こう」

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