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3-4.搭乗〜グアムに到着
僕たちは早速出発ロビーにある保安検査場を通った。何もおかしな物は持っていなくても、金属探知機を通るのはなんとなく緊張してしまう。ブザーは鳴らずに無事通過できてほっとした。
その後出国審査でパスポートと搭乗券を提示して通過すると、広々としたショッピングエリアに出た。
「わあ、お店いっぱいあるんだね」
「何か買っておくものはある?」
「うーん、特に思いつかないかな」
「じゃあ、ぐるっと店を見たらラウンジに行こうか」
「うん」
特に目的もなく免税店等を見て回る。化粧品売場を通りかかったとき、急に声を掛けられた。
「あら?あなた……志信さん?だったかしら」
「え……と」
サングラスと帽子を身に着けた30~40代の女性だ。どこかで見たことがあるような気がしたけど、知り合い……?
「あ、ごめんなさいね。この前の披露宴に参列させてもらった香月です」
「あ、ああ!その節はどうもありがとうございました!」
どこかで見たって、テレビだよ!しほりさんのお友達で、披露宴に来てくれた女優さんだ。
「ご旅行かしら?」
「はい。新婚旅行で……」
「あら、それは楽しんでらしてね。私は仕事でこれから移動なの。それじゃあ失礼するわね」
「ありがとうございます。失礼します」
彼女は海外で撮影の予定でもあるのだろう。マネージャーらしき人物と連れ立って歩いて行く背中を見送った。
「びっくりしたね、一瞬誰かわからなくて焦っちゃった」
「ああ。そういえば空港だから有名人がいてもおかしくないよな」
抱っこの状態で寝ていた匠実がふにゃふにゃ言い始めた。
「あ、もうそろそろ授乳の時間だ」
「じゃあラウンジに行こうか」
「うん」
今回飛行機の座席はビジネスクラスを予約しているので航空会社のラウンジを利用できた。キッズスペースもあって、子どもを遊ばせるスペースや授乳室も完備されている。もちろんオムツ替え台もあった。
予定ではかなり時間に余裕があると思っていたけれど、ミルクを冷まして飲ませたり、オムツ替えをしたりしていると思いの外すぐに時間が経過していた。
ラウンジでは食事の提供もされていて、僕たちは飲み物と軽食をお腹に入れつつ少しだけ休憩ができた。
◇◇◇
搭乗時刻となり、乳幼児連れなので優先搭乗で機内に入る。
ビジネスクラスのシートはフルフラットになる仕様だったけど、午前中発の3時間半のフライトなので大人は寝ることはなかった。
長時間のフライトの場合子連れでビジネスクラスに乗るのは気が引けるけど、時間も短く行き先もグアムということで機内は子連れが多いと口コミで見ていた。今回はビジネスクラスに他にも子連れがいたので安心した。
匠実はミルクを飲んだ後で満足していたので、離陸前に眠ってしまった。なのでとくにぐずることなく飛び立ち、1時間ほどして目を覚ましたので機内食として貰える離乳食を食べさせた。これが口に合ったようでパクパクと食べてくれた。
その後もちょっと泣くことはあったけど、抱っこして通路を歩けばすぐに泣き止む程度で問題なく過ごせた。着陸時に気圧の変化で泣き出したときも、事前に予習してあった通りマグボトルで飲み物を飲ませたらすぐに機嫌が良くなった。
◇◇◇
到着後入国審査を終えてツアーの送迎車に乗り、ホテルに到着した。
これでもう夕方になっていて、この日は移動で疲れているから出掛けずにホテルで過ごすことにした。クラブラウンジが利用できるプランだったので、そこで軽い食事もできるし足りなければルームサービスを頼むこともできる。
とにかくチェックインが終わって部屋に入ることができてほっとした。
「はぁ、よかった。匠実あんまりぐずらずにここまで来られたね」
「ああ、かなりご機嫌だな。匠実えらいぞ」
にこにこしている匠実を抱いてバルコニーへ出る。オーシャンフロントの部屋なので視界はほとんど全て海で、そこに日が傾きかけているのが見えた。
「わ!綺麗~!ほら、匠ちゃん見て海だよ。明日はビーチに行ってみようね」
「このホテルは初めてだけどビーチも近いし眺めもいいな」
「うん、すごいなぁ。どこにも行かなくてもここに居るだけで十分旅行気分に浸れちゃうね」
初めての海外、しかも南国のリゾート地なんて僕の人生に縁のない場所だと思っていた。とにかく赤ちゃん連れで無事に到着しただけで上出来という気分だった。
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