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3-5.初日はホテルでゆっくり

初日の夕食はそこまでお腹も空いていなかったのでラウンジで出されているものを食べたら満足できた。 お酒やカクテルも色々あるし、南国らしいジュースも揃っている。 海が見える窓際の席は人気で、既に空席は無いほど盛況だった。僕たちはフロア中央の席だったけど、それでも夕日が沈むのを横目に飲むカクテルは格別だった。 匠実には持ってきたレトルトの離乳食をあげながら、大人はビュッフェ形式の料理を食べる。フルーツは匠実も食べられるので、持ってきて小さく切って与えた。 ホテルはお店の多いエリアの中心部に位置している。立地の良さで選んでいたから、周囲にレストランもあるしテイクアウトできるお店も色々ある。だけどこの日は移動で疲れていたからホテル内で気楽に食事ができて助かった。 「志信疲れてないか?大丈夫?」 「大丈夫。ちょっと疲れたけどこの景色見ながら食べて飲んだら疲れもどこかへ飛んで行っちゃうくらい楽しいよ」 「よかった。でもちょっと顔色悪いから早めに休もう」 「うん。匠実も今は元気そうだけどきっと慣れない旅行で疲れてるだろうしね」 ほっぺにバナナを詰め込んでリスみたいな顔でもぐもぐしている匠実を見る。 機内でもCAさん達に愛嬌を振りまいていたほどで、見知らぬ場所でもマイペースに過ごせていた。 食事の後僕たちは部屋に戻って持ってきた荷物を滞在中使いやすいように整理した。 部屋は広々としていて大荷物を広げても余裕がある。ベッドはキングサイズで、匠実用にはベビーベッドを借りることが出来た。 その日は宗吾の言う通り僕も相当疲れていたようで、荷物がある程度片付いたら急に目眩がしてきた。 「大丈夫か?さっきより青い顔してる。横になってろよ、匠実は俺がちゃんと見てるから」 「ごめん、ありがとう」 「一応抑制剤は持ってきてるよな?」 「あ、うん。そのバッグに入ってるよ。てもヒートは来月だから大丈夫」 「そうか。水飲む?」 「うん、ありがとう」 宗吾がグラスに水を注いで渡してくれたので口にする。 旅先でヒートを起こしたら大変なのでちゃんと日程は調整済みだ。しかも何かあった時のためにきちんと強めの薬も持ってきている。勿論、僕が飲んでも副作用が出ない物だ。 宗吾だって疲れてるはずなのに、いつも以上に僕に気を遣ってくれてるのがわかる。 しかもこの後匠実をお風呂に入れて歯磨きをし、寝かしつけるまで全部1人でやってくれた。 「ごめんね、宗吾」 「何が?」 「全部やらせちゃって……」 「ああ?こんなの、今休みなんだから俺が全部やるよ。普段仕事で風呂入れる以外なかなか出来ないから」 「ありがとう……」 旅行で夫婦喧嘩することもよくある話みたいだけど、宗吾は何があってもあまり動じないしずっと優しい。 「さーて、いつも癒してもらってるお返しをしないとな」 「え?何?」 「うつ伏せになれる?」 「なれるけどどうしたの?」 僕は言われた通りうつ伏せになる。すると宗吾が僕の腰と足をマッサージし始めた。 「えっ。そんなことまでしなくていいのに!」 「飛行機で足浮腫んだだろ?明日から元気に遊べるようにちょっとだけマッサージするから」 「あ、ありがとう……」 「奥様には元気でいてもらわないとね」 宗吾は楽しそうに腰を揉んでくれる。 そういえば、妊娠後期で眠れない日にも夜に背中をさすってくれたりしたなぁ。 今はその時お腹にいた匠実がこうして横に寝ているんだよね。 「宗吾、ありがとう……大好き」 「知ってる。俺も愛してるよ」 宗吾が僕の顔に近づいてきてキスしてくれた。 「そういえば、気持ち悪いの治ってきたよ」 「よかった。血流良くなったせいかな?」 「そうかも。調子に乗ってお酒飲んだのもまずかったかなぁ。明日はノンアルコールのにする」 「ああ、そうだな」 宗吾のお陰でこの夜はぐっすり眠ることができたのだった。

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