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3-7.現地3日目はビーチとエステ

プールと買い物で満喫した2日目に引き続きグアム3日目。 朝食はまず匠実におかゆを食べさせるためラウンジへ行った。僕たちは軽くフルーツだけお腹に入れ、その後近くの有名なおにぎり屋さんでテイクアウトしてみた。 ホテルから徒歩5分程度のところに小さな日本風の暖簾のかかったお店がある。 マグロのポキ、スパムエッグ、ツナマヨ、エビの天ぷらのおにぎりと豚汁を買って、部屋のバルコニーで海を見ながら食べた。 今回の旅行は期間も短くてまだ現地の食事に飽きたりしていなかったけど、滞在が長くなった場合日本食がこのクオリティで食べられたらホッとするだろうなという味でとても美味しかった。 「米がうまいな」 「うん。こっちに来て食べたお米の中で一番これが馴染みある食感だね」 匠実はまだ軟飯しか食べられないけど、もう少し大きい子どもだったらこれはきっと喜ぶと思う。もしまた匠実が大きくなってグアム来ることがあったらお世話になりそう。 そしてこの日はプールではなくビーチの方に出てみた。匠実は波が怖いのか、水の中に入れたら泣いてしまったので、砂浜で遊ぶことにした。 砂を口に入れやしないかとちょっと不安だったけど、手で触って砂の感触を楽しんで笑っていたから良かった。 お昼はホテルのすぐ近くにパンケーキ屋さんがあったからそこで食べた。日本にも進出しているチェーン店だけど、ここも子連れが多くて国内にいるときもたまに訪れていたので安心感があった。 午後もまたビーチか、買い物へ行くか……と言っていたのにホテルの部屋に着いたら宗吾が腕時計を見ながら僕に言う。 「やばい、時間だ。志信10分後にホテルのエステ予約してるから今すぐ行って」 「はっ?!」 なんのこと……? 「初日に俺がマッサージしてやったら気持ちよさそうにしてただろ?それにリゾートと言ったら奥さんはエステに行くもんじゃないのかと思って勝手に予約しておいた」 「え?宗吾が……?」 びっくりしてポカンとしていたら背中を押して急かされる。 「もう時間無いからほら、行って。地下1階だから、行けばわかる」 「で、でも匠実は……」 「俺たちは適当に遊ぶか買い物でも行くから、じゃあな」 宗吾は僕を部屋から押し出してドアを閉めた。 「嘘でしょ……」 僕はドキドキしながら言われたフロアでエレベーターを降りた。案内の表示に従ってエステサロンを訪れ、片言の英語で予約名を告げる。(というかほぼ日本語だけど向こうは日本人客慣れしていたから通じた) レモングラスソルトのボディスクラブを使ったエステで、皮膚の角質を除去し、血行を良くしてくれるというものらしい。ーーーと高卒の僕が頑張って聞き取った内容なので間違ってるかもしれないけど…… とにかく初めて体験したエステはとても気持ちがよかった。 これまでにエステの施設があるホテルでも働いたことはあるけど、身綺麗な女性が通っているな~という印象しかなかった。まさか自分がこんなところに来ることになるとは…… 宗吾が予約してくれてなかったら自分では絶対来ようとは思わなかっただろう。リラックスできる音楽のかかっている室内で僕はうつ伏せになり背中やふくらはぎをマッサージされながら考える。 もし「エステに行きたいか?」と聞かれてもたぶん断っていた。こうやって勝手に予約してくれたからこそ僕はここに居る。 宗吾のこういう強引な所って人によっては嫌なのかもしれないけど、僕にとってはありがたいんだよね。 そもそも、彼と出会ってこうして結婚まですることになったのも宗吾が絶対僕の匂いを手に入れたいって強く思ってくれてなかったら実現していないんだ。 プライドが高くて、ちょっと強引で、マイペースなところがあってちょっと気難しいタイプだけど、恋人同士になってから宗吾はすごく優しくしてくれるし、息子思いの良いパパにもなってくれている。 今日だってこうやって僕に1人の時間をくれて、匠実とお留守番してくれるんだよね。新婚旅行も本気で海外に来られるなんて思わなかった。宗吾の行動力と決断力のありがたさに改めて気付かされた旅になった。 ◇ ◇ ◇ エステを終えて部屋に戻ると、ベビーベッドに匠実が、ベッドに宗吾が寝ていた。同じような顔ですやすや眠る2人を見て僕は胸の底から幸せな気持ちがこみ上げてきた。 「ありがとう、宗吾」 2人が起きないようにそっと僕もベッドに寝そべった。うつらうつらしていたら、匠実の声がした。最近は泣いて起きることはあまりなくていきなりおしゃべりを始める。まだ何を言ってるかほとんどわからないけど、マンマ、など少しずつ意味のある言葉も話すようになってきていた。 匠実を抱き上げたところで宗吾も目を覚ました。 「ああ、帰ってきたの全然気付かなかった。ちょっとだけ買い物行ったんだけど戻ってきて疲れて寝ちゃってたよ。エステどうだった?」 「最高に気持ちよかった~」 すると宗吾が僕の方に顔を近づけて匂いを嗅いだ。 「うん、いつもと違う匂いがするな」 「わかる?レモングラスのボディスクラブでマッサージしてもらったよ」 「そうか。いい匂いだ」 「ありがとう宗吾。僕疲れてたつもり無かったんだけどエステで足とか腰マッサージしてもらったら身体がすごく軽くなった」 「だろ?よかったな」 宗吾は満足そうな顔をしていた。 この夜はホテルのバーベキューレストランに予約を入れていた。海が見えるテラス席で魚介やお肉を食べられる。ちょうど時間的に夕日が沈むところを見られて景色も最高だった。 この旅行中、一瞬スコールに見舞われたりもしたけど基本的には天気に恵まれていた。 「あっという間に最後の夜だな」 「うん。でも大満足の旅だった!海外ってすごくハードル高いと思ってたけどこうやって来てみると子連れでも楽しめるものだね」 「また来ような」 「うん。僕は子どもの頃あまりどこにも行けなかったから、匠実にはいろんなところを旅行して見せてあげたいなぁ」 誰にでもニコニコして現地の人たちにも可愛がられていた匠実を見ているとそう思えた。宗吾が忙しいからなかなか遠出はできないかもしれないけどね。 「志信の行きたい所も匠実の行きたい所も俺がなるべく連れていけるように頑張るから」 「僕も今回はただ連れてきてもらって宗吾に頼り切りだったけど、もっと頑張るね!」 「いいんだよ、お前はたまの旅行くらいリラックスしてくれ」 「でも、いつもリラックスしてるよ。宗吾のおかげで」 「そうか?それなら良かったよ」 ロブスターやお肉の焼けるいい匂いがする。フルーツも美味しい。 新婚旅行に来られて本当に良かった。

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