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2章-3.妊娠12週の壁を超えて
やっと妊娠12週を過ぎ4ヶ月に入った。
妊娠12週を超えると流産率が一気に下がると言われていてここまで来るのが待ち遠しかった。
妊娠中の流産の約8割が12週未満で起きているそうだ。
一般的につわりも11~12週で落ち着くと言われていて、実際あんなに気持ち悪かったのに最近たまに吐き気がしない日もあるくらいだ。
「礼央、今日はあんまりつわりも酷くなくてご飯作れたよ」
帰ってきた礼央にキスしながら言うと礼央は嬉しそうに微笑んだ。
「よかったですね!顔色も良いですよ。お腹痛くない?」
「うん。でもちょっと腰と股関節が痛いかなぁ。だるいというか」
「子宮も大きくなってるでしょうし、調べたら関節緩めるホルモンが出るみたいですね。ご飯食べたらマッサージしますよ」
食事後、一緒に洗い物をしてからソファに横向きに寝て礼央が腰をさすってくれた。
「んー、手あったかくて気持ちいい」
「あんまり強くしない方がいいみたいなんで、撫でるだけにしますね」
「ありがとう」
「つわり、やっと終わりそうですかね」
「うん。良かったよ。永遠にあんなの続いたらどうしようかと思っちゃった」
「具合悪くてソファに丸くなってる美耶さんも可愛いかったですけどね。猫みたいで」
「はぁ~?こっちは必死だったんだぞ。そんなこと思ってたのかよ」
「あはは、怒られると思ったからその時は言わないようにしてたんです」
まったく…基本優しいけどたまに変なこと言うよなぁ。
「美耶さん、ゴロゴロしてるの好きじゃないでしょう。家にいてもいつも動き回ってたから。だからソファに横になってる美耶さんって貴重な姿だったんですよ」
「礼央の考えてることってよくわかんない…」
「え、なんでかな。普通ですけど」
ソファに仰向けにされ、キスされた。
マッサージはもう終わりらしい。そもそもマッサージは口実でただスキンシップしたかったんだろう。
俺もいい加減ベタベタするのにも慣れてきたので、礼央の頭をぎゅっと抱きしめた。
「普通ではないと思うよ。変だって絶対」
2人でクスクスと笑った。
これまでは元々不妊と診断されていたことを考慮して2週に1回検査してもらっていたが、妊婦健診が4週間に1回になる。そして今度からは不妊のことで相談していた医師から担当が別の医師になるそうだ。
男性Ωの出産は産道が無いため予定帝王切開となる。
もし不安があればこのクリニックではなく総合病院に転院して出産することもできると言われた。
ただし、総合病院だとΩ以外のバース性の妊婦と一緒に診察・入院となるそうだ。
それならこのままΩ専門クリニックで出産しようと決め、転院はしないことにした。
やはり、いくらΩであっても男性ということで他のバース性の女性からは一線を引かれていると感じるのだ。
ネットの記事などを見ても、Ω男性と同じ部屋で健診を待つのに抵抗があるという人もいた。
その点Ω女性はΩ男性への理解がある。
このクリニック内にも男性Ωがたくさんいるし安心なのだ。
それでなくても不安な妊娠生活で、なるべく不安を増やしたくなかった。
「元々診てくれた先生が居るのも安心だし、クリニックで出産するって言っちゃった。いいよね?」
「ええ、もちろんです。なるべく美耶さんの負担が少ない方向でいきましょう!」
礼央も賛成してくれた。
今のところ外に出て会った人は皆男性妊娠に理解ある人で好意的だった。
でも、そうじゃない人もいる。男性が妊娠することについて快く思わない人もいるんだよな…
未だにΩを蔑む人もいて、そういう人は特に男性Ωはβやαの男性より劣ると信じて疑わない。
そのような人に今後出会わず済むといいのだが。
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