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2章-8.妊娠後期 両親学級と入院の準備
妊娠33週の健診で、フクちゃんは2000gちょっとで大体週数通りの体重だった。
俺の体重も順調に増えていて、先日礼央に「ちょっと顔丸くなりました?」なんて言われてしまった。
うーん、気を付けないとな。
妊娠後期に入り、お腹が大きすぎてもう自分で足の爪が切れなくなっていた。そんな俺の爪を礼央は嬉々として切ってくれる。
「怖い怖い!ひーっ」
「動かないでよ美耶さん。動いたら肉まで切れちゃいますって」
「やだ!やめて!」
人に足の爪切ってもらうのって怖いものなのだと妊娠して初めて知った。
礼央は器用にパチパチと切ってくれた。
相変わらず礼央は仕事も忙しそうだけど、なるべく早く帰宅してくれて頼めばなんでもしてくれる。
そんな礼央も一緒に「両親学級」なるものに参加することになった。
人形を使った沐浴体験や、オムツ替えの練習、そして衣服の着替えさせ方などをパパと一緒に学ぶ教室だ。各自治体で予約制で行われている。
「人形の重さリアルですね。え、これ泡って流していいんですか?あれ?」
「ここ持ってるからそこ流して…うん、そうそう」
礼央はワタワタしながら沐浴の体験をしていた。
この日は全部で8組の夫婦が参加していて、男性Ωは俺ともう1人いた。
沐浴体験が終わり、次に旦那さんが妊婦のお腹の重さを体験する「妊婦疑似体験」というのが行われた。7kgの重りの付いたジャケットを着用して階段を登り下りしたり、落ちたものを拾うなどするのだ。
お腹が大きく迫り出す形のジャケットを着た礼央を見て俺は大笑いしてしまった。
身長186cmで脚の長い彼がお腹だけ出てる謎の体型には違和感しかない。
「美耶さんそんなに笑わないで下さいよ!恥ずかしいじゃないですか」
礼央はキョロキョロと周りを見て顔を赤くしている。
どの夫婦のご主人も皆恥ずかしそうにしていた。
「なんだよ、俺の身体だって同じだろ。俺の体型が恥ずかしいって言いたいの?」
「ち、違いますよ!そういうんじゃなくて…美耶さんは似合いますけど…」
似合うってなんだ。
俺だって地味に今まで着られてた服が着れなくなるのショックなんだからな。
「ほら、階段降りておいでよ」
「わかりました…」
足元が見えなくて怖い!と言いながら礼央は帰ってきた。
「はい、次はこのボール拾って~」
「く、苦しい。重い…!」
「なんか膝傷めそうだろ?」
「あー、これずっとはキツイです…もっと僕が美耶さんのことサポートしないと…」
これはいい体験だな。礼央のようにあれこれしてくれるタイプの旦那さんでも、実際にこの体験をしてみて初めて気付くこともあったみたいだ。
「旦那さん達みんなやる気あるしいいパパになりそうだったよね」
「そうですね。積極的な人が多くて僕ももっと頑張らないとって気になりました」
両親学級の後の礼央は以前にも増して俺に気遣ってくれるようになった。
さて、そうこうしているうちにもう妊娠9ヶ月を迎えて入院に関する説明も受けた。
出産する時にかけてほしい音楽などもリクエストできたが、特に無かったので普通でお願いしますと答えた。
そしてそろそろ入院グッズを揃えることにした。
病院から貰った入院の案内に書かれているリストを元に荷物をバッグに詰め、その他にもネットで調べて必要そうなものを入れていく。
帝王切開で前日に入院となるため、入院当日は割と暇らしい。タブレットを持参して映画や本で時間潰しできるようにしておく。
俺が通うクリニックは入院中に着る室内着やタオル、洗面用品などは全て常備されており持っていく必要は無い。
助産師のアドバイスで、寒いかもしれないから羽織るものがあると安心と言われたからカーディガンは用意した。それから下着も自分で用意することになっていて、産褥ショーツという物をネットで購入した。
産後の赤ちゃん用のオムツに関しては、布おむつ推奨のクリニックなので、用意されている物を使用して洗濯はクリニック側がしてくれることになっていた。
なので、退院の際のオムツだけ自分で用意することになる。
退院時に必要な洋服等は入院中に礼央に持ってきてもらう予定だ。なので、入院当日の荷物とは別に事前にひとまとめにして用意しておいた。
「よし、こんなところかな」
これでいつでも入院できるぞ。
「なんだかいよいよって気がしてきましたね」
「うん。あのね、こっちが入院する時俺が持ってく荷物でこっちは産後退院前に礼央に持ってきて貰いたい荷物なんだ」
「了解です」
退院後フクちゃんが使うベビーベッドやベビーバス、哺乳瓶や洋服などは既に購入してあった。
洋服やガーゼなどに関しては一度水通しをした。新品をそのまま着るより、一度水洗いしておいた方が生地が柔らかく肌触りも良くなるし汗も吸うようになるそうだ。
こんなことするなんて妊娠するまで知らなかった。
新生児用の服や靴下はとても小さくて可愛らしい。小さな服が干してあるのを見るだけで、新しい家族を迎える期待にワクワクした。
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