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第21話 3月20日 12:00 二周目は最悪に
病院のベッドの上で、窓の外に見える桜色の並木道を見ながら俺は考えをまとめていた。
間違いない。
今は、3月20日だった。
俺は6月24日から、再びこの時に戻ってしまったのだ。
一体、どんな訳だろう。
あのまま俺は、6月28日に戻ると思っていたのに……
だけど、これは最悪の事態じゃない。
何度もの異常な体験を経て大分状況に慣れてきた俺は、そう結論づけた。
最悪なのは、28日の時点で響が死ぬこと。
今が3月なら、もう一度やり直せばいい。
もしかすると、以前のやり方がどこか甘くて俺は未来で失敗し、再び戻ってきたのかもしれない。
だから、今回は前回よりも更に上手くやってやればいい。
そうだ、何度でも繰り返そう。
響が助かるなら、何度でも愛を続けよう――
――そう、思っていた筈なのに。
どうして、こうなってしまったんだろう。
※※※
「――っ、くっ、あ、は、ぁあんっ」
「……先輩、あまり声を立てると外に聞こえますよ?」
「だ……だって、お前……んっ」
俺は漏れ出てしまいそうになる甘い声を必死で抑え、なんとか響に文句を言おうとする。
けれども口から出るのは、情けない嬌声。
「……ほら、身体を揺らすと……音で気付かれたらどうするんですか?」
「あ、駄目……っ!」
響に耳元で囁かれ、後ろから貫かれている身体が反応してしまう。
その振動が手に伝わり、俺を支えているドアががたりと音を立てた。
「――あれ? 用具室誰か使ってる?」
「もう片付けは全部終わってますよー」
「……っ!」
劇団員の声を耳にして、俺はびくっと身を竦ませる。
まずい。
見つかってしまう。
そんな俺を後から抱き締め、響は小さく笑った。
「まあ、見つかってしまったらしまったで――皆にはっきり証明できますね」
それは、俺が聞いたことのないほど熱に浮かされたように熱く……そして冷たい声だった。
「信良木先輩が、俺のものだと」
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